2022年9月19日
当クリニックで行う目の下のクマ(くま)、たるみ治療(経結膜的下眼瞼形成術)の特徴-8
治療に関する今後の課題
これまで述べてきたように、目の下のクマ(くま)、たるみの治療は70年以上の歴史があり、その手法もさまざまであった。我が国にもこれらの治療は50年以上前に導入され、その中でもつい最近まで皮膚切開法が主流であった。七年前より筆者は患者さんたちが皮膚切開法をためらうケースがあまりに多いことを知り、皮膚切開法に変わる経結膜面からアプローチする治療を開始した。
当初はいわゆる下眼瞼脂肪の”脱脂”を主体に行っていた。下眼瞼脂肪が膨隆、逸脱する典型的な目の下のたるみ症例は、この”脱脂”のみで良好な結果が得られた。だが典型的な目の下のたるみではなく、いわゆる”くま(クマ)”の解決を望む症例が増えるにつれ、”脱脂”のみでは対応出来ず、くま(クマ)の原因である下眼瞼構造自体の改変を行う必要に迫られた。
前述の如く欧米諸国では前隔壁アプローチが一般的である。我が国では後隔壁アプローチが一般的であり、筆者も当初は後隔壁アプローチを学んだ。だが後隔壁アプローチでは”脱脂”は可能だが、目の下のクマ(くま)症例のように下眼瞼構造の改変必要な場合、後隔壁アプローチでは対応不可能である。そこで筆者は米国で前隔壁アプローチを学び、我が国では目の下のたるみと同様に症例数の多い目の下のクマ(くま)解消のための方法を開発した。
目の下のクマ(くま)、たるみ治療は今でも多くの施設で皮膚切開法が用いられている。経結膜的アプローチによる治療のコンセンサスは現時点においても一般的に確立されたとはいえず、この治療の価値が認められ、普及するには今しばらく時間が必要であろう。しかし他外科領域でも皮膚切開を用いない、もしくは最小切開法が一般的となった時代の流れから察するに、経結膜的アプローチが主流となる時もそう遠くはないであろう。
治療の将来像
経結膜的下眼瞼形成術は、通常メス、電池メス、高周波(ラジオ波)メスや炭酸ガスレーザーを用いて行われている。どのような器機を用いても治療可能だが、粘膜や結合組織へ進入する際、可能な限り低侵襲であるほうが瘢痕形成が少なく、腫れの回復が早くなるので高周波(ラジオ波)メスや炭酸ガスレーザーを優先的に用いるべきである。
高周波(ラジオ波)メスや炭酸ガスレーザーの優れた点は開創と止血を同時に行える点で、止血に必要な時間が大幅に短縮される。外科手術では治療時間の短縮に比例して治療回復時間が短くなるため、手術後早期社会復帰を切望する現代人にとって治療時間の短縮は大変重要な要素である。
当クリニックでは低出力高周波(ラジオ波)メスを用いて治療を行っているが、 治療直後の腫れは最小限だが、 治療翌日数日間下眼瞼腫脹が発生する。だがその程度も社会生活にさほど支障を来さない程度で収束することが一般的である。 ただし高血圧、糖尿病、ヘビースモーカーなど、健康上の不具合が存在する場合は通常より腫れが長引く可能性があるので、そういった患者さんにはその旨伝えておいた方が無難であろう。今後さらに低侵襲なレーザー機器の開発が待たれるが、現状でも十分良好な結果が得られているので、患者さんにとってかなり満足度の高い治療といえるであろう。