診察
治療前写真-1,2を見ると、眼輪筋部(いわゆる”涙袋”)とその下部にヒアルロン酸注入の痕跡を認めます。
経過
数年前に他院で下瞼にヒアルロン酸注入を行ったものの満足度が低く、下瞼クマ・たるみの根本的解決を求めて当院を来院した患者さんです。
治療方針
経結膜(目の裏側・結膜面)アプローチによる下眼窩脂肪及び注入ヒアルロン酸の軽減・除去及び下眼瞼皮膚挙上を図ることにしました。
治療後の評価
治療直後の写真-3,4を観察すると、大きな腫れもなく治療が順調に終了しました。治療翌日の写真-5,6ではお化粧で上手にメイクアップされていますが、下瞼領域の軽度腫脹を認めます。治療10日後の写真-7,8では両下瞼の腫れはほぼ収束しましたが、眼輪筋部位(いわゆる”涙袋”)に注入されたヒアルロン酸が依然存続しています。治療1ヶ月後の写真-9,10を観察すると下瞼の腫脹は完全に解消されましたが、依然眼輪筋部位(いわゆる”涙袋”)に注入されたヒアルロン酸による膨らみは存在しています。しかしこの眼輪筋部位(いわゆる”涙袋”)の膨らみは美容的に見て遜色ないこと、また本人の希望もあり、溶解せずそのまま維持することとしました。
本症例の如く、経度下瞼のクマ症例では根本的治療を行うのを躊躇し、その代わりにヒアルロン酸注入するケースが少なくありません。最近のヒアルロン酸はその性能の著しい向上のため、数年前に注入されたものでも本症例のようにその効果が持続している場合が少なくありません。しかしヒアルロン酸注入にて下瞼のクマを完全解消するのは困難なため、最終的に下眼瞼形成術を行うケースが増加しています。
ヒアルロン酸は自然経過とともに次第に吸収されること、また不必要となった場合、ヒアルロン酸分解酵素にて溶解出来るので、眼周囲へのヒアルロン酸注入は比較的安全な治療です。しかし最近ヒアルロン酸に代わって、さまざまな非吸収性充填材料、組織自体を増やす線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板多血漿(PRP、platelet rich plasma)、自己脂肪注入等を安易に注入するケースが後を絶ちません。しかしこういった非吸収性治療は万が一その結果が思わしくなくても、ヒアルロン酸のように簡単に除去することは困難なため、その使用にあたっては極めて慎重な姿勢が必要です。