2022年9月21日
カウンセリング能力の必要性(概論)
医療で欠かせないのは最新(アップデートされた)知見に敏感になること、さらにその知識を獲得しつつ、それに基づいた揺るぎない技術を獲得・維持し、患者さんたちにそれらを安定提供することだが、そういった安全安心な医療行為を行う大前提として不可欠なのが患者さんとのコミュニケーション能力であり、その能力は患者さんたちとのカウンセリング時に真っ先に問われることとなる。
医療行為で真っ先に行う患者さんとのカウンセリングは、従事する診療科が何であろうと不可欠で、例えば手術主体に行う外科分野でもカウンセリングはことのほか重要で、何故なら患者さんたちはいきなり手術決断するのでなく、担当医・手術執刀医との入念なカウンセリングがその決断へのファースト・ステップとなからだ。
従って医学生が卒業したての研修医たちが、真っ先に学ぶのが先輩医師たちの行う外来診療(カウンセリング)や入院患者さんの回診見学で、その際先輩医師たちがどのように患者さんと良好なコミュニケーションを図るかを学び、来たるべきときは自分たちが実践出来る能力を獲得せねばならなかった。
この先輩たちのカウンセリング見学から当時僕が見逃さなかったのは、名医、もしくは人気医師たちは皆決して上から目線を持つことなく同じ人としての平等目線を維持し、フレンドリー(気さく)気さくに接することで、患者さんがオープンとなりはすい人間関係を初対面時に構築する姿だった。
逆に”反面教師”との言葉があるように、患者さんからあまり人気のない医師たちのカウンセリング風景からも学んだことは多く、そういった医師たちはカルテやパソコンばかりのぞき込んでいて患者さんとあまり目を合わせようしなかったが、その行為は医師ー患者間というよりもどんな人間関係に最低限必要なコミュニケーション・マナーを欠いており、その結果、その関係には近づきようのない一定距離が形成され適正診療を妨げていたのだ。。
もっと言うと、こういったコミュニケーション上の距離は医師-患者間の信頼関係の構築を阻害し、そうなると患者さんは殻に閉じこもってしまいがちで、医師はその後の医療行為に必要な患者情報を引き出せなくなるため、例えばそれが外科分野の手術必要な患者だったとすると、たとえそれが重要手術であってもそれに二の足を踏んでしまう恐れが生じるはずだ。
このように良好な人間関係構築の基本となるコミュニケーション能力だが、医師の場合上述の如く、医師-患者間という立場上不平等になりはすい社会的関係や、そもそも医師は一般的に若年層時代から英才教育を受ける悪影響のせいか、一般常識レベルでのコミュニケーション能力が一般人より劣る傾向が否めない。。
だが、往々にして我々は自分がいったいどのような人間なのか意外にも知り得ず、特に社会的立場が高いとされる医師たちはその分プライドも高く、自分たちのコミュニケーション能力に疑いを持どころかその瑕疵を誰も指摘しないので、童話”裸の王様”にあるように、自分だけ気付かずにコミュニケーション能力を欠いたままの医師に成り果てることも少なくないだろう。
今回は、診療科に関わらず医療分野で基本中の基本になるのがカウンセリング(コミュニケーション)能力で、そもそもこの能力は医療に限らずまっとうな社会人に必要不可欠な能力でもるし、意外にも医師たちにその能力が不足する場合が少なくないので、我々医師はその重要性を再認識すべき必要があると述べたが、次回は僕の従事する(美容・形成)外科医療を例に挙げながら、各論的にその能力の重要性についてさらに考察を深めたい。