2022年9月21日
美容医療への提言-1
水彩画のようにデリケートな美容医療
美容医療の一般的イメージには”拝金(儲け)主義”がいつまでたっても蔓延っていて、僕がこの医療に従事する使命として、この美容医療のネガティブイメージを払拭することであると、本ブログでこれまで何度も述べてきた。
美容医療はご存じの通り自費診療下にて、治療方針・料金も全て各院が独自判断行っていて、国民皆保険下で行う一般医療よりも自由度が高いのは恵まれているともいえるが、その自由度を利用してお金儲けに邁進する施設が後を絶たないのは、この医療の最大の問題でもある。
本来医療は、患者さんの健康や幸せを最優先にする、献身・ボランティア的要素が高い職種であるにもかかわらず、美容医療が美に計り知れない価値を感じ、それを得ようと時として衝動的になりかねない女性につけ込んで、この医療を金儲けの手段とするレベルの低い連中が少なからずこの医療に紛れ込んでいることがこの問題の原因である。
こういった望ましくない輩たちが、美容医療を金儲けの隠れ蓑にして暗躍する限り、この医療の社会的評価はいっこうに上がらず、それはまるでパステルカラーで書かれた水彩画にたった一滴の黒インクが落ちただけで、瞬時に灰色に豹変してしまうのと同様なのだ。。僕が美容医療をパステルカラーに例えたのは、美容医療自体、他医療に負けずとも劣らない大変価値の高い医療であることをこの医療に20年近く従事した今、改めて実感しているからである。
決して侮れない外見的コンプレックス
そもそも美容医療は外見的コンプレックス、さらには加齢に伴うしみ・しわ・たるみなどの老化現象の改善・解消目的に行うが、こういった外見的コンプレックスを背負って生きることは、美意識の高いデリケートな人々とっては、まるで呪縛を背負わされているような憂鬱な状況であろう。
こういった外見的コンプレックスによる呪縛は、それに悩む人々の自信を奪い、時として物事に消極的・否定的になったり、もしくはこの状態が長年継続すると、引きこもりや鬱状態などのメンタルヘルスに悪影響を与え、最悪の場合、重篤疾患を引き起こしかねず、我々が想像する以上に心身に多大な悪影響を及ぼす恐れがある。
僕がこの医療を始めた当初、外見的コンプレックスがそれほど人々に悪影響を与えるとは想像すらしなかったが、長年この医療に従事している間、様々な患者さんたちと遭遇しているうちに、それが現実問題であることを確信した。
外見的コンプレックスに苛まれた典型的症例
例えば母親に連れられた僕のクリニックにやってきて女子高生は、毎朝メイクアップに何時間も費やすので、母親がその様子をよく観察すると、上瞼に針金のようなものを当てて二重の位置を決め、そこに”アイプチ”と呼ばれる人工糊をくっつけて、にわか仕立ての二重を作るのに時間と労力を費やしていたとのこと。
この行為は女子高生の毎朝の貴重な数時間を奪うのみならず、彼女の上瞼は糊によるか慢性的炎症により赤く痛々しくただれており、こういった状態を長く放置すると慢性的アレルギー皮膚炎により、上瞼皮膚の著しい老化(たるみ)の原因にもなりかねない危険な行為である。
そこで僕は、彼女と彼女の母親と相談し、出来るだけ控えめで自然な二重を外科的に形成することを勧めたところ、治療を受けることを承諾し、治療を行ったところ、彼女は目元のコンプレックスから解放され、毎朝、にわか二重を作るために時間を浪費することもなくなったと母親から感謝の報告があった。
またあるとき、婚約を済ませたカップルがクリニックを訪れ、女性のほうから婚約者男性が眼鏡を片時もはずすことがなく、最近は自宅に引きこもりがちで仕事にも行かないので、その理由を彼に尋ねたところ、”目元のクマがコンプレックスで眼鏡も外したくないし、仕事にも行きたくない”と答えたとのこと。
それを聞いた彼女は内心、”仕事に行きたくないのを目元のクマを口実にしているのでは?”と疑い、彼に「それでは目元のクマを治療したら?」と勧めると、彼は真剣に「是非治療したい」と申し出たため、二人で当院にやって来たのだという。
彼の顔をよく観察すると、まるで俳優さんのように整ったハンサムな顔立ちに、これこそ”玉に瑕”という諺に相応しい目元に著しいクマを認めたと同時に、彼はとてもハンサムな顔立ちをしているだけに、目元のクマは、彼にとって許し難いコンプレックスとして立ちはだかっているのだろうと容易に想像出来た。
またこの時期二人は結婚を控え、よりナーバスになった彼はその悩みが一段と強くなり、眼鏡が外せなくなったり、この悩みが解決不能と絶望的になって引きこもり状態となったのだろうが、機転の利く彼女のほうは、ネット検索で当クリニックを見つけ出し、すぐに彼を僕の元へ連れてきたのである。
僕が治療内容とその効果について治療症例を用いて具体的に示すと、彼は”是非治療を受けたい”と申し出、後日治療を行ったが、その甲斐あって彼の目元のクマはほぼ解消され、それ以来彼は眼鏡も外し、すすんで仕事に行くようになったと、彼女から喜びの報告を受けた。すなわち、彼の引きこもりは決してサボり癖などではなく、彼は本当に目元のクマがコンプレックスで、人前に出たくなかったのだろう。
この医療に従事する医師に伝えたいこと
僕は日々の診療で、こういった外見的コンプレックスに思い悩む症例に少なからず遭遇しているし、謙虚で大人しい日本人の患者さんたちがその悩みを言葉で表すことが少ないにしても、外科手術を決意しまでその悩みを解決しようとする姿を鑑みると、多かれ少なかれ上述例のようなそれなりの悩みを抱えているのではないか予想している。
こういった一見、客観的には些細に見える外見上コンプレックスも、それに悩む人々にとっては、人生に深刻なダメージを与える由々しき問題となるだけに、その問題を大幅に解消出来る美容医療は、辛い痛みや放置しておけば命を奪いかねない、病を解決する一般医療と同等の価値があることをおわかり頂けるかと思う。
だからこそ、美容医療がその価値にに見合うだけの社会的評価が得られるよう、この医療に携わる1人1人の医師が一般医療と同等の、本来あるべき患者優先の正しい医療のあり方を再確認し、決して儲け主義を優先することなく、まっとうな医療の実践に努めて頂きたい。