2022年9月21日
通山
スキートレーニングのため、冬期は隔週で実家のある札幌に帰郷している。土曜日午後六時に診療を終え、その足で羽田空港に向かい、午後8時半発札幌行最終便に乗ると、札幌の実家には午後11時頃到着する。翌日昼頃、高速で40分ほど走ると標高1023メール、かつて札幌オリンピックスキー会場になった手稲山にたどり着く。スキー人口が減少し、スキー場は常に空いていること、また高速リフトが設置されているので、2時間ほどノンストップでスキーをすれば、それ以外のことは何もできないほど体力が消耗する。
スキーやスノーボードは若者のスポーツだから、 40歳過ぎの僕が今さら何故スキーなのかと思うかも知れないが、実はスキーにはアンチエイジングの要素が強く盛り込まれている。僕は大学生の頃、スキー冒険家、三浦雄一郎のスキー学校でスキーインストラクターのアルバイトをしていた。その頃印象的だったのは三浦雄一郎のお父さんが85歳過ぎで普通にスキーをしていたことだった。
スキーは常に体のバランス維持のため脳刺激が活発に行われる。脳は思考のためだけにあるのではない。運動機能を司るためにも脳は同様に大切で、運動から得られる脳刺激は、ぼけなどの脳の老化予防に大変有効なのだ。またスキーはスリルが伴うため、アドレナリン分泌が盛んに行われる。つまり脳内ホルモン分泌が潤滑に行われることで脳活性化が起こり、ぼけ防止どころか若々しい認知力が維持される。
またスキーに用いる筋肉は脊柱起立筋、股関節筋群など、いわゆる”インナー(コア)マッスル”だ。この筋肉は体を支える重要な筋肉なので、これらの筋肉と背骨さえしっかりしていれば背骨が曲がったり、老人特有の足つきになったりすることはない。それは骨、筋肉は継続的に使用している限り衰えないという特性による。
昔病理教室で病気で亡くなった方々の解剖も行っていた。高齢者と若年者を解剖学的に比較すると、皮膚の老化は年齢に準じていたが、驚いたことに皮膚下にある筋肉は高齢者と若年者でそれほど差がなかった。歌手の歌声も加齢によってもあまり変化しない。それは歌声が声帯筋肉によって発声され、この筋肉も常に使用している限り衰えることがないからだ。
スポーツの精神的効果もことのほか重要だ。スポーツによる肉体強化がなされると、心もそれに応じて元気になる。心が元気になると、仕事や人生そのものに対して前向きになるのは言うまでもない。またスキーのように自然と一体になるスポーツの精神的癒しの効果も見逃せない。僕はスキーを終えて東京に戻ってくると、普段仕事等で蓄積したストレから解放されていることに気がつく。
つまり僕は人生を前向きに生きるためにスポーツを活用しているのだ。この世に生を受けたからには”もう歳だから無理”、などと自分に線を引くのは止め、最期まで充実して生きる努力をすること。この姿勢は少子高齢が加速的に進む我が国において非常に大切だと思っている。