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美容外科ブログ

2022年9月21日
ブレイクの後

“どんなビジネスでも始めること止めることはそれほど困難ではない。難しいのはそのビジネスをいかに安定維持できるかなのだ。”この格言を今になって痛切に感じるようになった。開業前、渋谷の美容外科で勤務医をしていた頃、そろそろ僕も何か新しいことを始めたいと思うようになっていた。ある日、旅行に出かける予定のお客さんが、その直前に目の下のクマ(くま)、たるみ治療を行えるかカウンセリングにやってきた。

僕は最近海外で学んだ皮膚を切らない新しい手法であれば抜糸などの術後処置がなく、旅行前でも治療を行えると伝えた。このお客さんは早速治療を受けたいと申し出て、治療を行っのだが、旅行から帰ってきた時にはすっかり綺麗になっていた。

当時の眼周囲治療は皮膚切開を伴うオーソドックスな手法が一般的だった。しかし、この手法は傷跡の問題や回復時間が遷延するため、必ずしも患者さんに人気のある治療ではなかった。そのため、眼周囲のたるみを外科的に治したくても、こういったデメリットのせいで、治療をためらうお客さんが後を絶たなかった。

これに変わる良い治療がないかと探していた時に、皮膚を切らずに行う目の下のたるみ治療を海外で学び、”これはすばらしい治療である!”と直感した。 この治療を見ていた看護師さんも「先生、この新しい治療はとても良いですね!きっと人気がでますよ。」と僕に伝えた。その時、”この新しい治療を中心に自分のクリニックを立ち上げたらうまくゆくかもしれない”と思った。

僕の予想通り、2005年春の開業以来、この治療は人気を博し、2008年夏頃まで患者数は増加の一途をたどった。一番混み合った2007年後半には予約が4ヶ月待ちにまで達した。人気の理由を今振り返ると、2005年から2008年夏のリーマンショックまで日本の景気がずっと上り調子だったことを追い風に、 この治療が非常に優れていることを主調した医師が誰もおらず、この治療に関して 僕の独壇場となったためである。

だがどの分野でも人気絶頂のいわゆる”ブレイク”状態になると、そこにはさまざまな落とし穴がある。僕の場合、この治療に有頂天となり、外科医として最も大切な一つ一つの治療を大切にして、たとえ些細なことでも何かあれば常に反省する態度を失ってしまった。

美容治療はとてもデリケートなので、こういった反省を怠ると治療結果が粗くなり、次第に評判を落とすという悪循環に陥ってしまうのだ。また、僕のクリニックのブレイクを外から見ていた競合他院が価格を下げたり、奇をてらった手法を用いたりと、あの手この手でこの顧客層の流れをつかむことに躍起するため、2007年末を境にブレイクは次第に沈静化した。

僕は当時日本であまり行われていなかったこの治療の価値をどんなに周りから批判されても主調し続けた。その結果ようやく今になってこの治療の価値が一般的に認知されるようになった。残念ながら、どんなブレイクでもその先には必ず終わりがある。だが本当に大切なのはブレイクが終わった後、いかにソフトランディングし、それを継続してゆけるかなのだ。

開業以来6年半が経過した今月、ちょうど6000名の治療を終えた。苦い経験も含め、多くの患者さんの治療を経験し、今はどんな症例が来ても良好な結果を出す揺るぎない自信を得た。 この治療に再び大きなブレイクが起こることはないし、起こる必要もない。今後は過去の反省を生かしながら、一人一人を大切にする治療を目立たず焦らず続けてゆけたらと思う。

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