2022年9月20日
ロス・アンジェルス”オレンジ・カウンティ”-1
ロス・アンジェルスを訪れた理由 24歳の夏、僕はロス・アンジェルスの南に位置する高級住宅街 、オレンジ・カウンティを訪れた。バンクーバーから夕刻南に向かって飛びたった飛行機は、カリフォルニア沿岸をどんどん南下しながら飛んだ。僕は飛行機の窓から太平洋をのぞいた。そのはるか彼方には日本があるはずだが、平線上には真っ赤に沈む夕日と遙かに広がる水平線がどこまでも続いていた。日本を離れてから2ヶ月が経過していた。夏休みはすでに後半を迎え、あと数週間で日本に戻らなければならない。初めての北米旅行で僕は夢のように充実した毎日を過ごしていただけに、日本に帰ることを考えると気が重くなり始めた。 前年の冬、僕はスキーインストラクターとして山ごもり生活を続けていた。 ある時僕は無謀なスキー滑降で激しい転倒をした際、右肩靱帯を痛めた。この怪我はかなりひどく、それから1~2ヶ月、肩を動かすことが出来ないほどだった。肩がが回復したと思うと、昼夜を問わず行った激しい練習の疲労から膝や肘などの関節も痛めた。そんな経験から、将来医師としてスポーツ整形外科に関われたらと思うようになった。好景気の時代、僕が所属していた著名プロスキーヤーのスキースクールには有名人たちがちょくちょく訪れた。 僕はそんな彼ら彼女たちの華やかさに憧れを感じながら、人生を模索している最中でもあった。ある日、招待された有名人の中に、ロス・アンジェルスで開業するスポーツ整形外科医師がいた。この医師の妻が日系人だったこともあり、僕はロス・アンジェルスのこの医師のクリニックを見学させてもらう承諾を得た。そんな理由で僕はロス・アンジェルスに向かった。 オレンジ・カウンティ空港のアクシデント バンクーバーからロス・アンジェルスまでは約3時間のフライトだが、夕暮れとともに眠気を感じた。放射状に広がるロス・アンジェルスのオレンジ色街明かりは、内陸に向かってどこまでも続き、この街が巨大であるのは一目瞭然だった。飛行機は着陸態勢に入ったが、長旅のせいか眠気はいっこうに収まらず、いつの間にか眠りに落ちていた。着陸の衝撃とともに僕は目を覚ました。 オレンジ・カウンティは ロスアンジェルス南部に位置し、富裕層が多いため、この地区には独自の空港があった。 飛行機が停止すると、僕は客室乗務員の指示に従うまま、 タラップから滑走路に降りた。だが正直言って、僕はまだ寝ぼけたままだった。 この空港に到着ロビーはなく、滑走路の上を空港職員に誘導されるまま歩いた。滑走路と飛行場外を分ける金網フェンスの外に出た途端、僕は機内に眼鏡を忘れたことに気がついた。僕は駆け足でフェンスの中(空港内)に戻り、飛行機に向かった。その瞬間だった。「フリーズ!」と言う大きな声が聞こえた途端、僕は何のことかわからないまま、スーツを着た何人かの頑強な男たちにあっという間に取り囲まれた。中には拳銃を手にした男もいた。僕は慌てて「機内に眼鏡を忘れたので、取りに行こうと思ったのです。」と訴えた。彼らの一人が声を荒立てながら、「あなたはこの飛行機の乗客ですか?パスポートと航空券を出しなさい!」と僕に命令した。