2022年9月20日
プーケット
旅行の目的 日本から飛行機で6時間、今回はタイ最大の島、プーケットへと向かった。この島を訪れたのにはいくつかの理由があった。まず、バンコク病院・プーケット分院の視察、2番目にプーケットに別荘を持つ友人の訪問、そして2年前の津波で一命を失った英国出身の友人の弔いだった。プーケット島はタイの南端にある島で、きれいな海を求めてたくさんの観光客が訪れる。10年ほど前までは日本人観光客のブームになっていた。しかし、2年前のスマトラ沖大地震以後は日本人観光客がグンと減り、今は韓国やロシアからの観光客が増えている。半年前にリニューアルされたばっかりのバンコク国際空港に着陸すると、滑走路が凸凹しているせいか、飛行機が大きく縦に揺れる。友人の話ではタクシン政権の混乱の中に建築した新空港、構造上にさまざまな問題があるとのことだった。 バンコク病院・プーケット分院は、海外からこの島に住む欧米人が多いので、英語で用が足りる。美容外科も発達しており、ボトックスやヒアルロン酸などのプチ整形はもちろん、フェイスリフトのような手術も一般的に行われている。興味深かったのは、治療後に用いるハーブのスキンケア製品、タイならではの自然の恵みを利用した製品だ。これを用いると治療からの回復が早いという。美容医療はそれぞれの場所で、その地域の特性を生かした治療が行われているのが興味深い。そういったものが本当に良い物か知るには、実際に足を運んで自分の目で見るしかない。 英国人の友人はプーケット島北部のカオラックという場所で、スキューバ・ダイビングのインストラクターをしていた。彼とは東京で知り合ったのだが、25歳と若く、プーケット島での生活を謳歌していた。2年前の12月の朝、いつも通り彼はスキューバ・ダイビングの仕事でカオラックの浜辺にいた。突然、津波がこの浜辺を襲い、カオラックだけで700名もの命が奪われた。その中に僕の友人もいた。弔いのためにカオラックを訪れてみたが、今はまるで何事もなかったように復興されていた。亡くなった友人も、まさかこんなにきれいな浜辺で命を落とすことになるとは夢にも思わなかったに違いない。運命のいたずらとしか言いようがない。 仏教国のタイ この時期プーケットはとてつもなく暑い。気温は30度を軽く上回っている。プーケットは赤道に近いせいで、日本の真夏である7~8月よりも4月頃が最も暑くなる。先週過ごした氷点下10度のソルトレークとは雲泥の差だが、ここまで暑いと冷房なしでは寝ることすら出来ない。プーケットに別荘所有する香港人の友人は、北京にある中国銀行を顧客とする巨大ファームの公認会計士。伸びゆく中国経済とともに、彼の懐も豊かになり、投資の意味も含めてこの豪邸を手に入れた。もしプール付き、4ベッドルームのこの家を日本や米国に構えたとしたら想像を絶する値段となるが、プーケットではその10分の1程度で買える。20メートルのスイミング・プールは夜でも生暖かく、これ以上の贅沢はない。”と夜のプールに身を浸しながら思った。 タイと言えば、エステ等のリラクゼーションが観光客に人気がある。米国人観光客の多いハワイなどと違って、プーケットはヨーロッパからの顧客が多く、ひっそりと過ごす感がある。早速僕も海が見渡せる丘の上にあるスパエステに行ってみた。エステは丘を覆う緑の中にあるヴィラ風の建物で、そこにいるだけで心地よい。スチームサウナで身体を暖めてから、スクラブや薬草のジェルを塗って、サランラップみたいなものに包まれたりしているうちに終了。あたりもいつの間にか真っ暗闇となっていた。帰りがけにサンダルに足を通そうとすると、黒い物が動いた。よく見るとハエよりは大きい。“もしや、ゴキブリか?”と思ってたじろいだ。僕を担当したタイ人の若いエステティシャンは、笑いながら「それはゴキブリではありません。」と言って、素手でつかむと窓から外に放った。タイは仏教国、むだに生き物を殺したりしない。短い滞在期間であったが、優しい国、タイでしばし心も身体も癒された。