2022年9月19日
女性について-2 (女性と男性の違いはたった一つの遺伝子)
遺伝子とは? 医学生の頃、基礎教育でカエルの卵の細胞核内の遺伝子を取り出す実習があった。遺伝子はローマ字のxのような形をした2組のペアから成る染色体と呼ばれる物質から出来ている。何故2組あるかと言えば、一つは母親から、もう一つは父親から由来する遺伝子があるからだ。この実習では20組くらいからなるカエルの遺伝子ペアを揃えることが出来れば終了だった。医学生の頃の僕はとにかく早く実習を終えて遊ぶことばかり考えていたから、遺伝子の意味など全く考えていなかった。遺伝子が生物にとってこれほど重要な意味を持つとわかったのはニューヨークにあるロックフェラー大学で遺伝子研究を行ってからだった。 遺伝子は今から50年以上前にニューヨークの遺伝子研究者ワトソンとクリックによって発見された。人間の体のほとんどがタンパク質から出来ていると言ってよい。このタンパク質を作る情報が遺伝子の中にあり、それが核酸と呼ばれる特殊な物質からできていることを発見した業績によって、ワトソンとクリックはノーベル賞を受賞した。 ロックフェラー大学 僕の留学していたロックフェラー大学はとても歴史のある大学だった。日本にも馴染みがあるとすれば、野口英世博士がこの大学で、梅毒や黄熱病の研究をしていた。大学図書館には野口英世博士の銅像と研究風景写真が飾られているのが印象的だった。この大学はとても優秀で、過去に20人くらいのノーベル賞受賞者を輩出している。大学長になるにはノーベル賞をもらっていなければなれないし、僕の周りにもノーベル賞を狙って研究しているような連中がごろごろしていた。医学生時代不勉強だった僕も周りの雰囲気に圧倒されて、この大学に居る時はさすがに一生懸命勉強した。。ある日、ロックフェラー大学で、遺伝子の存在を証明したワトソン博士の講演を聞いた時はさすがに感動した。 生物は遺伝子を運ぶ乗り物に過ぎない?ワトソンは“生物は遺伝子を運ぶ乗り物に過ぎない。”という格言を残した。研究前には全くわからなかったこの言葉の意味が、研究を終える頃にようやくわかるようになった。では、この“生物は遺伝子を運ぶ乗り物”とは一体どういうことなのか?人間は先祖から引き継いできた遺伝子の役割をその個体ごとに表現しているに過ぎない。生まれてきた時に引き継いだ遺伝子は自分たちではどう変えることも出来ない。 例えば、僕は「もっと背が高く生まれてきたらどんなに良かっただろう。」と常にコンプレックスを持っていたが、これは無い物ねだりであってどうすることも出来ない。僕の兄は180cm近くあって大柄だ。兄が引き継いだ遺伝子は僕が親からもらったものより、身長の面では優秀だったのだろう。このように我々人間は遺伝子の組み合わせによって体の構造も機能も異なる。つまり遺伝子の表現されるままの存在が生物なのだ。 遺伝子上の男女の違い 男と女の違いがたった一つの遺伝子の差から出来ていることを考えてみてもなるほどと思う。動物には性染色体と呼ばれる遺伝子があり、女性はそのペアがXX、男性は XY だ。つまりたった一つの遺伝子の違いによって、男性と女性の差が出来る。この組み合わせに変なことが起きると厄介なことになる。例えば、遺伝子の組み合わせが間違って、XXYなどとなると女性と男性が混ぜ合わさったような人間になる。 性染色体を見るとXには女性らしさ、Yには男性らしさの遺伝子が入っている。人間はアフリカの黒人の女性から進化してきたことが遺伝子から証明されている。ということは人間は女性の体が基盤となっていて、男性の体は女性の体に修飾されることで成立している。男性が男性ホルモンの量が少ないと女性っぽくなるのは体の基本が女性から出来ているからだ。 たった一つの遺伝子の違いによって、このような外見上の違いばかりでなく、考え方や行動にまで男女差が現れることはとても興味深い。一般的に女性のほうが現実的で、男性の方がロマンチストと言われるのは男性には女性にないY遺伝子があって、男性は現実的なものに何かがプラスαされるのかもしれない。この一つの遺伝子の違いからなる男女が社会的にどのように異なるかは、これまで心理学の専門家によって詳しく分析されているので僕の出る幕ではない。あくまで美容外科医として感じ取れる女性の特徴について述べてゆこうと思う。