2023年4月22日
“疲労”と”疲労感”の違い
毎月一度行う産業医訪問では、先方からのリクエストで”疲労”について講義しましたが、それは僕が産業医活動を行う新宿御苑さんも花見シーズンという繁忙期を終え、その間溜まった疲れがどっと出る時期らしいので、それをいかに乗り切るかを当職員さんたちが知りたいからとのことでした。。
まずは”疲労”についてのお堅い話をしますが(^0^;)、”疲労”とは激しい運動や長時間の労作(骨を折って働くこと)を行ったり過度ストレス状況におかれた場合に、“だるい”・“しんどい”と感じる原因です。
そして疲労には”通常疲労”と病的疲労”があり上記が”通常疲労”で、”病的疲労”とは風邪や肝臓病など何らかの身体疾患、もしくは自律神経失調症、不安、うつ病などメンタルヘルス障害を罹患しいる場合、どんなに体を休めても回復しにくい疲労のことを表します。
要注意なのが”疲労”と”疲労感”の違いを知ることで、それは””疲労すれば疲労による全身倦怠感や活動意欲の低下、所謂”疲労感”を自覚するのが常ですが、実は疲労していてもそれを自覚しないのことがあり、それが健康上の大問題になりかねないからです(O_O)
早速その具体例を述べますが、現代を生きる多忙な人々は自分のペースよりもむしろ、社会・仕事優先にそちらのペースに順応せざるを得ませんが(>_<)、そういったペースを無理に継続していると当然疲れがドンドン溜まってゆきます。。
ところが多くの真面目な日本人はそれを我慢しながら、たとえどんなにその状態が辛くても文句を言わずに、その”疲労”をコーヒーやリポビタンDなどの栄養ドリンク、さらにはお酒などで誤魔化しながらやり過ごそうとしますが、実際、コーヒー・栄養ドリンク内のカフェイン、そしてアルコールなどの薬物は疲労感緩和に著効します。
こういったやり方で疲労感を強く感じずに、その結果心身に疲労が蓄積し続けると、ある時これ以上疲労を受け止めきれない臨界点に達し、メンタル破綻や感染症・胃腸疾患などの身体疾患を煩い、最悪の場合は心筋梗塞・脳卒中など突然死を引き起こしかねません。。
この”過労死”は”疲労”と”疲労感”が乖離した経過で発症し、その具体例として45歳で心筋梗塞による突然死した整形外科医がつい最近、裁判で”過労死”と判決・認定されましたが、この外科医は亡くなる直前まで手術を行っていたとのことです(>_<)(>_<)
その日この整形外科医は4件目の手術を終えた直後に倒れ、そのまま心肺停止状態となり翌日亡くなりましたが、その死因は心筋梗塞と断定され、しかも亡くなる前1ヶ月間100時間以上の時間外労働をしていたことから、労働基準監督署は”著しい疲労の蓄積をもたらす、特に過重業務に就労した”として労災認定したのです。
上記の如くこの整形外科医の場合も、明らかに”疲労”していたにも関わらず”疲労感”が得られにくい状態、つまり外科医の使命感から自らを鼓舞しながら無理矢理仕事・手術に邁進した結果、それがあるとき破綻を来し”突然死と”いう最悪の結果を招いたのです。。
なので”勤勉は美徳”とされる日本ではありますが、その過度な勤勉は決して肯定されるべきでなく、もっとゆとり・余裕を持ちながら仕事が出来る環境作りの為の”働き方改革”がもっと進歩することを強く願っています。