2023年12月3日
”コールドケース”-2
前回ブログでは、米国で過去(1970~1980年代頃)に頻繁に発生した凶悪(殺人)犯罪の中に、少なからず数の事件が所謂”コールドケース”に陥っているいこと、つまり、その犯人が見つからずそのまま迷宮入りしている現実についてを話しました(O_O)
続いて1990年代初頭に発明されたPCR検査はそれから30年近く経過し、つい最近突如勃発した新型コロナ・パンデミックの初期診断に大活躍し、世界中の誰もが知る最も有名な感染症診断検査へと躍り出ましたが、PCR検査の更なる貢献は人類DNA(遺伝子)のデータベース化成功とともに、数十年前から”コールドケース”となった凶悪(殺人)事件の犯人検挙に大いに役立ち始めたことも伝えました。
今回本ブログで、僕がお気に入りのドキュメンタリー番組から特に興味深い事件をご紹介する前に、そもそも数十年前(古い事件では50年以上前)に発生した事件の犯人検挙にどのような意味を持つか考える必要があります。。
何故なら”今更犯人を見つけても殺された被害者は決して戻って来ないし、そもそも犯人も死んでいるのでは??”と他人事として考えがちですが、実はその事件の遺族たちは被害者を失ったその日から、悲しみ・落胆に打ちひしがれながら生き続けねばなりません。。
すなわち、犯罪被害の遺族になったその日から、遺族たちの人生・生活は一変する訳で、当然それは悲惨(マイナス)な状況に暗転せざるを得ず、遺族にとって暗礁に乗り上げたような気分を晴らしたり、その不幸に区切りを付けるには犯罪者を見つけ出さねばと、僕が遺族の一人になったとしたらそう思うはずです。。
では興味深い”コールドケース”の一例を紹介すると、二十歳そこそこの女性が自宅から数㎞離れた場所へ自転車で出かけたものの日没前に自宅へ戻らず、翌朝彼女自転車で走った道路が続く森の中で、彼女遺体を近隣住人が発見したという悲惨な事件が1970年初頭に米国で発生しました。。
当時は防犯カメラも無いし犯人はそれなりに用心深く、犯罪現場から凶器・指紋などの証拠隠滅を図った本事件のような場合、目撃者証言や犯罪者(容疑者)自身の自首・自白が得られないと、そのまま”コールドケース”になる場合が多く、本ケースも例外に漏れず事件から40年以上経ても未解決事件のまま放置されました。。
本事件は米国の一地方で発生した突発的レイプ殺人事件でしたが、こういった際、地方住人で起こり得るのが”流言飛語”で、本ケースでは無証拠にも関わらず、第一発見者のこの男性が犯人だと噂され、その後周囲の人たちから犯人だと決めつけられ、何十年もの間、差別・無視されるという、本事件の第二被害者となりました(O_O)
それは犯罪が発生した場所に暮らす人たちにしてみると、犯人が見つからないのは不安で仕方なく、無理矢理にでも誰かを犯人に仕立て上げることでその不安を解消するという、我々の奥に潜む未熟で醜悪な面がこういった不合理・不可解な現象を引き起こすのでしょう(>_<)
結局本事件は2010年代後半に入って、被害者に付着していた犯人体液の微量DNAをPCRで増幅し、そのDNAを犯罪者データベースと照合すると、なんとその場所から少し離れた場所で骨董品屋さんを経営する物静かな老人のDNAと一致したのですが、それはこの男が過去に一度だけ性犯罪を犯した際、彼のDNAが採取され犯罪者データベースに登録されてたからです。。
その結果、40年以上前に発生したレイプ殺人容疑者としてこの男は逮捕されましたが、彼はその犯罪を一切認めず、結局裁判、つまり陪審員による評決にて判決が下されることになり、その結果有罪判決を得ましたが、その犯人は遂に観念したのか、それともレイプ犯として刑務所に収監されると刑務所で酷い仕打ちを受けることを恐れたのか、収監前に自殺してしまったのです(O_O)
本事件から分かるように、”コールドケース”となれば被害者、その遺族たちは突如奈落の底に突き落とされるのみならず、善良な第一発見者まで”濡れ衣”をかけられるなどの”不幸の連鎖”が起こり得ますが、PCR・DNA解析技術の進歩により犯人を裁きにかける可能性が200年代に入って大幅にアップしました。
こういった最先端技術(PCR・DNA解析技術)の恩恵により、被害者遺族たちの事件後に被る辛い気持ちに区切りを付ける契機となったり、また、こういった不幸に巻き込まれた無実の人の疑いを晴らせるなど、その(分子生物学)価値は計り知れないのです。